JAXA地球観測データを用いてSDGs指標算出に成功

SDGs指標算出に適した確立した算出方法やデータがない

SDGs指標11.3.1のうち人口増加率は国勢調査等のデータから、土地利用率は衛星が取得した画像によって計算できると国連機関から提示されていましたが、日本国内においては利用データや算出方法が確立されていませんでした。また、指標15.4.2(山地グリーンカバー指数(MGCI))に関し、本指標の責任機関であるFAOは計算に必要なデータと方法論を提示していましたが、山地や植生は国によって状況が異なるので、各国が独自のデータを用いることを推奨し、あわせて各国に対して検証を要請していました。特に日本においては、細かな土地被覆の変化や植生などの実情に合ったデータを特定し、FAOの試算結果を検証する必要がありました。

新たな算出方法や適用データの検証及び確立

総務省が設置した「ビッグデータ等の利活用推進に関する産官学協議のための連携会議」のもと、関係省庁・研究機関と連携してSDGs11.3.1、15.4.2それぞれの指標試算と検証を行いました。
その結果、JAXAの高解像度土地利用被覆図(JAXA HRLULC Map)を含めた日本が有するデータを用いて、国内政令指定都市を対象域とした11.3.1指標(人口増加率と土地利用率の比率)の算出方法を確立しました。
一方、15.4.2指標については、JAXA HRLULC Mapを用いた試算結果はFAOの計算結果と比較してMGCIはトータルで1%以上低い値を示しました。これは、JAXA HRLULC MapはESAの土地被覆図(FAO計算に使用)よりも解像度が高く、日本の細かな土地被覆の変化や植生などの実情に合わせた分類となっていることから、MGCIの精度が向上した結果であることが確認されたとともに、FAOの計算結果は日本の山地の植生を過大評価していたことも明らかにしました。
以上の取り組みを通じ、JAXA HRLULC Mapを用いたSDGs11.3.1、15.4.2の指標の値の算出に成功し、公式数値として公表されました。

東京周辺の高解像度土地利用土地被覆図
赤く表示されている部分が都市(人口構造物)で、東京近郊の河川や湖沼の周辺には水田(水色の部分)が広がっている。
富士山周辺の高解像度土地利用土地被覆図
画像中央の茶色い部分が富士山で、「裸地」に分類されている。緑色の部分は森林で、森林は更に落葉広葉樹、落葉針葉樹、常緑広葉樹、常緑針葉樹、竹林に分類される。

この取り組みを通じて貢献可能なSDGsの目標

  • 11.3.1指標(人口増加率と土地利用率の比率)の算出に成功し、計算された諸都市の数値や計算方法をJAPAN SDGs Action Platformに掲載しました。
  • 日本の15.4.2指標(山地グリーンカバー指数)の算出に成功し、当該値は、その計算方法とともにJAPAN SDGs Action Platformに掲載されました。また、国連のSDG指標に関する機関間専門家グループ(IAEG-SDGS)が作成した「SDGs地理空間ロードマップ」のウェブサイトでは、MGCIを独自に計算した日本の取り組みが、日本の山地分類図や、JAXAの土地被覆図を基に作成された植生/非植生のマップとともに各国の取組の実例として紹介されています。
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