リブレット実用化技術の研究開発
リブレット実用化の課題
多くの燃料を必要とする航空産業にとって燃費を良くすることは経済的価値が大きく、CO2排出量削減に向けても大きな社会貢献が期待できます。
旅客機は、全空気抵抗の内で表面摩擦抵抗が占める割合が約4割と最も大きく、表面摩擦抵抗低減は空気抵抗を効率良く下げる方法の一つです。
リブレットは、高速で泳ぐサメの鱗の細かな溝から着想された表面微細加工技術です。旅客機の機体表面に約0.1mm幅の溝を加工することで、表面摩擦抵抗を低減して、燃料消費量及びCO2排出量の削減を可能にします。しかし、リブレットを旅客機で実用化するためには、製作性と両立する高い摩擦抵抗低減性能を発揮するリブレット形状設計、リブレット性能を長期間維持できる耐久性、広い面積を短時間で施工できる施工性が大きな課題であります。
リブレット技術で旅客機のCO2排出量を削減
JAXA航空技術部門では、高精度に摩擦抵抗を算定する数値解析技術に加え風洞試験技術を高度化させ、航空機用のリブレット形状設計や抵抗低減効果の実証を経て、航空機塗料を用いたリブレット技術の開発を実施しています。メーカー(O-WELL)、エアライン(JAL)、海外機体メーカーと連携し、2022年から、JALが実運航中の国内線旅客機(Boeing 737-800)を用いた耐久性確認飛行試験を実施して耐久性を確認、2023年からは施工技術の開発により別の国内線旅客機(Boeing 737-800)の胴体の広い面積(約10%)にリブレットを適用することに成功しました。さらに国際線旅客機(Boeing 787-9)の胴体30%の面積にリブレットを施工し、2025年1月から世界で初めて国際線旅客機の実運航に供されています。国際線旅客機への施工では、0.24%の抵抗低減効果があり、1機あたり年間約119トンの燃料消費量削減、381トンのCO2排出量削減効果があると見込まれています。これは、スギ約27,000本が1年間に吸収するCO2量に相当します。
今後、世界で25,000機以上となる旅客機にリブレットが適用されれば、莫大な燃料・CO2削減効果が期待できます。
この取り組みを通じて貢献可能なSDGsの目標
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気候変動に具体的な対策を:航空機の抵抗低減を通じた燃費向上による温室効果ガス削減を目指します。
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エネルギーをみんなに。そしてクリーンに:航空機の抵抗低減を通じた燃費向上によってエネルギー効率向上を目指します。
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産業と技術革新の基盤を作ろう:燃費向上による資源利用効率の向上を目指します。
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つくる責任、つかう責任:航空機の抵抗低減化を通じた燃費向上による天然資源の効率的な利用を目指します。